「不老不死なんてないよ。」

勝手に部屋に上がりこんでお昼ご飯を食べる彼に、私は小さく言い放った。すごい勢いで皿の上の食べ物を消化していた彼は、私の言葉でピタリと止まった。(面白いなあ・・・。)

「それはこれから確かめるんだヨ。」

「だってホムンクルスだって死ぬじゃない。ありえないことを確かめる必要なんてないよ。」

少しむっとした顔で話す彼が面白くて、私は茶化すようにそう言った。実際、私は不老不死なんてものは存在しないと思っている。きっと彼もそんなことは分かっているんじゃないだろうか。ないと分かってるものを探すということはなんとも不毛なことだと思うのだけれど、探さなければ彼の一族が滅んでしまうというのはなんとも不条理なことである。彼の国の王様もホムンクルスたちと大して変わらないのでは、と思う。私だったらそんな王様、首でも刎ねて殺してしまいたくなるよ。それを民のためと、こんなところまでやって来る彼がまだたった15歳だなんて世の中よく分からないものだ。

は不老不死になりたくはないのカ。」

私がぼうっと考え込んでいると、彼は真剣な顔で冗談みたいなことを聞いてきた。

「別にー。」
「なゼ?」
「だってずーっと途方もないくらい生きてるなんて冗談じゃないでしょ。人は死ぬものだよ。逃げても逃げてもいつかは死に追いつかれちゃうんだよ。でもだからこそ生きたいと思うんでしょう?不老不死だなんて逆に生きているのが嫌になっちゃいそう。」

「・・・そっカ。」
「そういうリンはどうなのさ。」
「俺ハ・・・んー、よく分かんないかナア。」

あー、出たよ「わかんない」。彼はいつだって大事なことは何も言わない。事情は話しても感情は出さない。一族を背負う、くらいの立場になったらそうなってしまうのだろうか。そういえばマスタング大佐も自分のことはあまり話してくれない気がする。もしかして男の人っていうのは皆そうなのだろうか。

「もし、・・・もしさ、」
「ん、」
「もし不老不死なんてなくて、リンが王様に国追い出されちゃったらさ、うちにおいでよ。」
「それ、プロポーズ?」
「ああ、そうかもね。」
「なんだそリャ。・・・でも、そうだなア・・・もしそうなったらお世話になろうかなア。」

あははー、と笑う彼はいつもと何も変わらないのに、私はなんだか泣きたくなった