ブーブーと、マナーモードにしたままだった携帯が机の上で動いた。ベッドの上でうとうとと寝る寸前だった俺は、睡眠を妨害されたことにより多少イライラしながら携帯を掴んだ。ディスプレイには『 』の字が並んでいた。正直眠いし面倒くさくて仕様が無かったが、切ったら明日文句を言われるのは目に見えているので、俺は渋々電話に出ることにした。 「もしもし・・・。」 「あ、泉?何、寝てたの?」 「いや、寝かけてたとこ。何か用か?」 「うん、あのね、あたしとウサギって似てるよね。」 「・・・ ・・・ はあ?」 ウサギ・・・?ウサギっていうとあの耳の長いふわふわした小動物・・・?愛玩動物として人気も高い、可愛いという形容詞がぴっったり合うあのウサギ・・・?あれが・・・?うざいくらいテンションが高くて、口より先に手が出て、小さい頃は近所のガキ達のボスだったが、ウサギ? 「・・・お前、とうとう頭沸いたのか。」 「ああ?もう一回言って見なさいよ。次言ったら殺すわよ。」 「言ってることおかしいだろ・・・。じゃあ、何処ら辺がウサギなんだよ。」 「あのね、さっきテレビで見たんだけどね。ウサギってさ寂しいと死んじゃうんだってさ。」 「あーよく言うよな、それ。で?」 「で?ってここまで言ってもわかんないのかな、泉くんは!」 「は?」 は怒ったような、でもどこか泣きそうな口調で怒鳴ってきた。正直何のことだかさっぱり分からない。それとと一体何の関係があるって言うんだ。 「だって泉ってば最近部活ばっかりで、一緒に学校に行ったり帰ったりもできないし、メールしても眠いとか言ってすぐブチるし、お昼休みに行っても寝てるし、たまに話しかけてきたと思ったら『ノート写さして』だの『教科書貸して』だのそんなのばっかりだし!久しぶりに電話したのに面倒くさそうにするし!あんたは何とも思ってなくてもこっちは寂しいと思ってるの!寂しくて死んじゃうの!あたしが死んだら泉のせいだからね!あたしが死んだら泉も悲しくて寂しくて死んじゃえばいいんだ、ばかあ!」 は俺に一気に罵声を浴びせるとそのままプツンと喋らなくなった。電話は切られてなかったけど、受話器の向こうからは何も聞こえなかった。 ・・・ ・・・。あー、要するに俺がかまってくれないから寂しい、と。なかなかあいつにも可愛いところがあったもんだ。 「ー、ほんとに死んだのか。」 「・・・まだ死んでないもん。」 「あそ。じゃあ今からお前んち行くから。」 「は?」 携帯を耳に当てたまま、上着を羽織って家族にばれないようにこっそり家を出た。の家は俺の家から100Mくらいだからすぐに着く。会ったときのあいつの顔が目に浮かぶようで、俺はニヤリと笑いながら未だに困惑しているに追い討ちをかけてみた。 「お前が死ぬ前に会いに行ってやるって言ってんだよ。寂しくて会いたくて仕様がないんだろ?」 「なっ・・・!そ、そんなこと言ってないもん!ばか!自意識過剰!泉なんて死んじゃえもう!」 「俺は死なねーよ?」 「なんでよっ!」 「だって俺が死んだらお前寂しくて寂しくて死んじゃうだろ?」
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