訪ねた人がいなかったときに家に上がって待ってる、ていうのは普通だ。常識範囲内だ。 ・・・。 ところがコイツはなんだ。まったくもって常識の欠片も見当たらない。どうしてが俺の部屋にいるんだ。しかもまるで自分の部屋のように堂々とベッドで熟睡している。ちなみに言っておくと、家には俺が帰るまで誰もいなかったうえにしっかりと鍵がかかっていた。完全なる不法侵入だ。いや、そんなことより一体コイツはどこから入ってきたんだ。もし「実は合いカギ作ってあるんだよねー」なんて言われても俺は信じるだろう。なんたってサボっても場所がバレないように屋上のカギを教師が気付かないうちに盗み、合いカギを作った奴だ。俺がいないうちにカギを持ち去るくらい簡単に出来るだろう。 「ん・・・あ、準太おはよう。」 「・・・・・・・・・・。」 「準太ー?」 この状況で「おはよう」はないと思う。今はもう6時過ぎてるからとかそんなことじゃなくて常識的な意味で。色々ツッコムことが多すぎて疲れ果てている俺を見て、首をかしげるにため息がでる。首をかしげたいのはコッチだ。 「お前はなんで俺の部屋にいンだよ・・・。」 「準太を待ってたからだよ。」 他に何があるのさ、そう言ってあくびをする目の前のを一回殴ってやりたいと思った俺の気持ちは間違ってないと思う。むしろ100人が100人同じことを思うんじゃないか。ツッコム気すら無くさせてしまうこのド天然っぷりは、一種の才能だと思う。 「ちがくてさあ、お前は、どっから、入ってきたんだよ。」 「え?ああ、一階の窓開いてたよー。ダメだよ戸締りはちゃんとしないとー。」 まったく準太ったらー、とニコニコされても返す言葉が見つからない。窓、から、入っ、た?なんで?ああ、窓が開いてたからか。・・・・・・・・いや、おかしいだろ。「窓が開いてる=入ってもいい」なんてありえない方程式がコイツの中では当たり前のように存在してんのか?今すぐ病院で頭ン中CTスキャンされるべきだ。きっとスッカスカだ。いや、むしろ何も入ってない。不法侵入もいいところだ。ニコニコ笑いやがって、訴えてやりたい。のおかしな話に付き合ってやってるだけで慰謝料を出して欲しいくらいだ。そのうち俺も感化されてしまうんじゃないだろうか。ダメだ。それだけは避けなきゃならない。 「今日は見逃してやる。用事言ってさっさと帰れ。」 「用事・・・・・・?」 「そうだよ。用事。何しにきたんだよお前。」 「・・・・・・・・。 準太ン家の晩御飯にお邪魔させてもらおうと思って来た。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・母さん、人ン家に勝手に(しかも窓から)入ってきたうえに人の部屋で熟睡して、さらに夕食まで食べていこうとする奴を殴ってもまったく罪にはならないよな。あ、偶然手元にボールが。最近テスト休みでナマってるだろうから投球練習でもするかな。調度いい的も目の前にあることだし。さあ、ピッチャー大きく振りかぶってー・・・投げました!早い早い!渾身のストレートです!ああ!バッターに当たった!デッドボール! 子供用のスポンジボールは見事に命中。ついでにが仕返しで投げてきた枕も俺の顔面に見事命中した。 「さっすが投手!コントロール抜群です!あたしってば天才!」 語尾に星マークがついてるんじゃないかってくらい目を輝かせて自慢気に笑うを見て、俺はまた深いため息をついた。 |