初めて男の人が泣くところを見た。彼はお墓の前で手を合わせて、静かに泣いた。夕日に照らされたその横顔を、とてもきれいだ、と思った。ゆっくりと上げられた瞼の奥には、意思のこもった揺らぐことの無い瞳があった。澄んでいて綺麗な、それでいて強い瞳だった。私はそれを見て、きっとこれが彼の人前で見せる最初で最後の涙なのだろうな、となんとなく思った。それが嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになって、私はどんな顔をすればいいか分からなくなった。 「よし、帰るか。」 彼はゴシゴシと涙を拭うと、私を見てニッと笑った。 「アスマ何か言ってた?」 「さあな。あっちでもこき使われてるんじゃねえか?」 苦労人だからなー、と私が笑いながら言うとシカマルも笑った。 シカマルは強くなった。アスマの死を受け入れて前に進んでいるのだ。その純然たる厳しい事実を受け止めることで、彼は強くなったのだ。きっと彼はこれから里の中枢を担う忍になっていくだろう。そして彼が弟子を持つ番になって、人を育てていく側になるのだ。沢山の人に出会ったり、再び大切な人を失ってしまったりもするだろう。その度にきっと彼は誰も知らないところで泣くんだ。そしてきっと1日経てばいつものように笑ってくれる。もし、そうなった時、私はきちんと彼が泣いていたことを分かっていようと思う。誰も知らなくても、私だけは分かっていようと思う。そして、彼が泣くのを1度でも減らせるように、ずっと彼のそばで笑っていたい。
雨色サンドウィッチ
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