家に戻るとすぐに喪服を脱いで着替えた。あたしは喪服が好きではない。首まであって暑苦しいし、何よりこの真っ黒な色に包まれているのが嫌だった。死んだ人もこんな真っ黒な服を着た人間がたくさん集まったって嬉しくないと思う。どうせなら白が良い。死んだ人の肌よりも真っ白で、何色にも染まることが出来るし、何色にも感化されないでいることも出来る。真っ白で、まぶしくて、なんだか天国に行けるような気分になれるから。 |
水面下で深呼吸
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今日の木の葉はしんみりとした空気が漂っている。すれ違う人は大体真っ黒な喪服に身を包まれて、その手には花があったりした。お墓にはたくさんの人がいて、あたしも両親の墓に花を手向けて目を瞑って手を合わせた。家に帰る途中は町を通らなければならなかった。なんとなく、しんみりした空気の中に憎しみとか嫌悪とかそんなものも混ざってる気がして早足で帰った。 帰って着替えると、冷蔵庫から朝作ったケーキを取り出す。出かける準備をして、髪を整えて外に出る。今日はたくさん知っている人に会ったけれど、やっぱり彼には会わなかった。それが仕方ないことであってもあたしはたまらなく悲しくなるのだ。そういう人がいることを彼はちゃんと知っているだろうか。 ピンポーン。 人気の無いアパートの廊下にチャイムの音が響く。ガチャリ、扉をそっと開けてあたしを見た彼は目をきょとんとさせた。 「よっ。お邪魔するねー。」 「は?ちょ、なんだよいきなり?!」 「だって皆外に出てるのにナルトだけ居ないんだもの。一人じゃ寂しいだろうなーって思って来てあげたの。あー、あたしったら優しい・・・!」 なんだよそれ、彼は呆れたような疲れたような顔でそういった。あたしが勝手にソファに座るとナルトも向かい側に座る。 「なんで家に引きこもってるのよ。」 「なんでって・・・分かってるだろ。」 分かってる。分かってるからこそイライラするのだ。今日はナルトの誕生日。それから、九尾が封印された日でもある。分かってるんだ、里の人がナルトを嫌ってるから、だからナルトも外に出られないことくらい。でも、ナルトが納得していたとしてもあたしの気がすまないのだ。だってあんまりだ。四代目は皆にナルトを英雄として見てほしかったのに、好きでナルトに封印したわけでも、好きで封印されたわけでもないのに。やりどころの無い悲しみや憎しみをナルトに押し付けるなんて間違っているはずなんだ。それなのに、八つ当たりされてるんだから怒ったっていいのに、ナルトはまるで本当に自分が悪いみたいに思っているし、「仕方ないだろ。」なんてちっとも仕方なくなんか無いのに言うし。ナルトのそういうところは嫌いじゃない。嫌いじゃないけれど、やっぱり 「優しすぎるんだよ、ナルトは。」 「はは、なんだそれ。」 ほら、そういう風にあたしの前では笑おうとしているつもりかもしれないけど、すごく辛そうなのが分かるんだから。こっちが泣きそうになるよ。 「なあ、本当に大丈夫だから。俺は別に今の状況に納得なんかしてないし、我慢だって出来てない。俺は優しいんじゃなくて面倒くさがりなだけだよ。だから、さ、お前が泣く必要なんて無いから。」 「・・・うっ・・・で、・・・でも・・・っ」 そんなの嘘だよ。君は優しいよ。そんな風に優しく言うからあたしが泣いちゃったじゃんか。 くしゃくしゃとナルトの大きくて温かい手のひらがあたしの頭を撫でる。 「なる、と・・・」 「ん?」 「たんじょ、び・・・おめ、でとう・・・っ」 ナルトは一瞬驚いたような顔をして、またふっと笑った。太陽みたいだな、と思った。 「憎まれたり妬まれたりしても、が来て祝ってくれるだけで俺は俺でいられるよ。あ、あと笑ってくれたらもっと幸せ。」 ああもう、そんな風にかっこよく笑いながらそんなこと言われちゃったら自然と笑っちゃうよ。恥ずかしくて照れくさくて、きっとあたしは今耳まで真っ赤だ。それなのにナルトは爽やかに笑うから、同い年のはずなのにあたしの方が随分と子供のように感じてしまうんだ。まいったなあ、もう。いつも、励ますつもりが逆に甘えてしまって。それでも君は笑ってくれるから、ますます君のことが大好きになるんだ。ねえ、どんなに周りの人たちがナルトを良く思っていなくても、あたしはずっとナルトの見方だよ。だって本当の君はとても優しくて一生懸命で素敵な人だってあたし知ってるから。今はまだ恥ずかしくてそんなこと言えないけれど、いつか伝えられたらいいな。 「ナルト、大すきだよ。今までも、これからも、ずっとずっと。」 「あー・・・今すっげえ幸せかも。」 そう言ったナルトの顔もいつの間にか真っ赤になっていて、二人で笑いあう。ねえ、あたしは今ナルトが生まれてきてくれたことに、出会えたことに心から感謝しているよ。
I am deeply
今日はあたしの大好きな人がこの世に生まれた1年で1番特別な日ですin love with you! |