きれいな人だと思った。細いけれど華奢ではなくて、羨ましいくらい肌と髪がきれいで、ひとつひとつの動きに無駄がない。仕事中だということも忘れて思わず見とれてしまった。怪我でもしたのだろうか。彼の左目は包帯で覆われていて、それすらも似合っていると思った。闇にとけそうな濃い紫色の着物を着て、手元には月の光で輝くキセルがあった。深い夜を背負いながらも彼には人をひきつけるものがあった。 一目見ただけなのに、わたしは強烈に彼に惹かれてしまった。 「。」 その声は低くて、でも色気があって。名前を呼ばれただけなのに、わたしは全身が熱くなっていくのがわかる。きっと顔なんて耳まで真っ赤で見られたら笑われてしまうだろう。今が夜で真っ暗じゃなかったら、わたしはきっと彼の顔を見て話すことも出来ない。だって彼の鋭くて美しい左目に捉えられただけで、わたしは何も言えなくなってしまうのだ。 「ククっ。、耳まで真っ赤だぞ。」 ああ、やっぱり。月明かりで分かってしまうほど赤かったのだろうか。わたしはますます恥ずかしくなって俯いた。顔を見られてしまって恥ずかしいのもあったし、彼の笑い声が普段の彼とは違う無邪気さとかそういうものがあってドキッとした。月に照らされた彼は優しくわたしに微笑む。その美しさにまたわたしは見とれる。 「、俺と一緒に来い。」 ああ、ずるいずるいずるい。そんな顔して、そんな嬉しいことを言われてしまっては、わたしはどうすればいい。本当にずるくて意地悪だ。そうやってわたしが困っている姿を見て笑うんだから。でも、それすらも愛おしいと思うわたしは本当にどうすればいい?あなたの言葉は、微笑みは本物ですか。あなたは攘夷志士、わたしは真撰組の隊士。なのに、あなたはどうしてついて来いだなんて言うんだ。どうしてわたしはこんなにも迷ってるんだ。分かってるのに。彼は敵だって分かっているのに。倒すべき相手なのに。どうしてわたしは彼がこんなにも愛おしい? 「、どうして」 「どうして?それはお前が俺に惚れてるからだ。」 そうやってニヤリと笑う彼は艶やかで綺麗でわたしの心を一瞬にして奪っていく。そしてまた、わたしは彼に溺れる。 |