頭がガンガンして割れそうだ。身体も言うことを聞かなくなってきた。まるであたしではない誰かが、あたしの中に入ってきてあたしの全てを乗っ取ろうとしてるみたいだ。視界が歪んで、あたしの世界は方向を失う。苦しい苦しいくるしいくるしいくるしい。耐え難いほどの喉の渇きがあたしを襲う。口を思い切り開けて助けを呼ぼうとしたけれど、ヒューヒューという空気が出る音しか出なかった。目がチカチカして世界が昼になったり夜になったり忙しく変わっていく。 ばかだなあ。なんてあたしはばかなんだ。エクソシストがアクマになって死ぬなんて、なんてまぬけなんだろう。結局あたしは何一つ分かっていなかったんだ。アクマがどんなものかなんて。憎しみがあるのはそこに悲しみがあるからじゃないか。どうしてそんなことに今まで気付けなかったんだ。アクマは全部悪で、そこから救ってやろうなんて、気持ち悪いくらいの綺麗事だ。ただのエゴだ。みんなそれを分かってて、それでも背負って生きていくことを決めてこの道を選んだのに、あたしはなんだ。散々足を引っ張ってきて最後にこれでは間抜けすぎて笑えてきそうだ。あはははははは 「おい、バカやろう。」 ああ、そうだよ。あたしは馬鹿だよ。悪かったなちくしょう。 「ん?ユウ?」 「気付くのおせぇんだよ、」 「ご、めん。」 あ、やばいな。世界が歪んでるよ。ユウのパッツンも歪んで見えるよ。ははっ。耳もよく聞こえなくなってきたし。まいっちゃうね、もう。声もかすれるし、頭は相変わらずガンガンするし。ああ、あたし 「死ぬのかお前。」 「そ、だね。」 ユウの表情はさっきから少しも変わらない。どんなに視界が歪んでいても、世界が反転していても、ユウの真っ直ぐな瞳だけは分かるんだよ。ねえ、ばかだと思ってる?愚かだと思ってる?笑っていいよ。馬鹿にしていいよ。ユウが勝手にあたしのおやつ食べちゃったことも全部許してあげるからさあ。だからさ、ひとつお願いしてもいいかな。 何も考えずに 一切躊躇わずに 君の全てをもって 「ころして」 あたしの世界はじょじょに光を失って、耳はまだ聞こえるはずなのに物音ひとつ聞こえなくて、でも頭痛とか身体の痛みなんかは全然なくて。終わりがすぐそこにあるのが分かった。ユウ、ユウ、どこにいる?わかんないや。多分そこにいるだろうから勝手に話すよ?あのね、ありがとうね。お願い聞いてくれてありがとうね。 それから、 こんなことさせてごめん、 ね。 「ばかだろ、ほんとに。」 |